2019年10月7日 オレンブルク
2019年10月9日 ニジニー・ノヴゴロド
講師
船曵 知弘 氏
- 済生会横浜市東部病院 救急科 部長
- 慶應義塾大学医学部 講師(非常勤・救急医学)
- 島根大学 嘱託講師(医学部Acute Care Surgery講座)
講座内容
- デジタルデータの活用
以前は診療録(カルテ)は、手書きで紙面に記載するというのが当然であったが、デジタル化に伴い現在では電子カルテが一般的になっている。これにより、同時に複数人が、また別の場所においても情報を共有することが可能になった。これにより医療の効率化が向上し、患者診療に大きく貢献することになった。情報としては、所見や経過などの記載の部分だけでなく、画像検査もデジタルデータ化により省スペース、省資源が可能になった。
さらには、このデジタルデータをクラウド化して、一つの病院だけでなく、近隣の病院でも情報を共有して、災害時に役立てるという工夫が行われている。患者情報を一つの医療機関しか所有していないと、その病院を受診できない場合にその患者の既往・過去の検査結果などを知ることができないため診療に支障をきたす。システムの導入自体には、病院を管理する経営者に係る内容であるが、災害医療はすべての医療従事者に影響する事柄である。
- 医療機器の進歩
検査や治療を行う上で医療技術の進歩は大きく予後改善に貢献している。例えば、検査ではCT検査は、解像度の向上に伴い小さな病変まで検出することが出来るようになり、さらに空間分解能の上昇だけでなく、時間分解能の上昇も目覚ましい。これにより血流動態まで検出することが可能になった。また治療ではロボット手術と言われている患者に負担の少ない手術も可能になってきている。これらの進歩は上記のデジタルデータの活用と合わさって遠隔医療にも貢献している。外科的治療や救急医療に携わる医師にとって、遠隔地での医療の質の向上には欠かせないものとなっている。
- 教育
上記のようなデジタルデータの活用や医療機器の進歩は日進月歩である。特に患者診療において、緊急対応を迫られる救急医療の現場においては、教育は重要である。たとえば、画像診断の専門医がいない中で、検査結果を正しく把握し、治療に活かすためには担当医師がこれに長けている必要がある。しかしながら、細分化された医療の中で、すべてにおいて専門医レベルの知識・技術を身につけるのは不可能である。そのため、救急医療にとって必要な最低限の知識を教育することが求められる。救急に携わる上級医にとって、後輩指導は診療の中でon-the-job trainingとして行っているが、それだけでは不十分であり、必要な画像診断に関してはoff-the-job trainingを通して、学んでいく必要があると思われる。
オレンブルク国立大学、オレンブルク国立大学付属日本情報センター、オレンブルク市立ピロゴフ記念病院、沿ヴォルガ研究医療大学におかれましては講座の実施にあたりご協力並びに積極的なご参加をいただき、感謝申し上げます。