2021年7月6日、ニジェゴロド州、サマラ州、スヴェルドロフスク州、そしてペンザ州からの聴講者を得て、川上慎市郎講師によるWEBセミナー「プラットフォーム型ビジネスの要諦と戦略展開の方法論」を実施しました。
プログラム:
- プラットフォーム型ビジネスモデルの特徴と収益性
ユーザーに対し、企業だけが直接的・間接的に価値提供を行う従来のビジネスモデル(ここでは「パイプライン型」と総称する)においては、ビジネスの持続的な優位性は企業の内部、すなわち独自の技術や製造ノウハウ、またそれに必要な原材料の調達力、供給チャネルの支配力などから生じてくる。プラットフォーム型ビジネスを展開する企業の場合、優位性は企業の内部ではなく、顧客(ユーザー)の数やそのもたらすデータの量から生じる。
ここで重要なことは、プラットフォーム型ビジネスにおいて主な収益源となる取引(トランザクション)は、収益をもたらすユーザーグループとは異なる、一見収益性の低い別のユーザーグループの多寡に左右されるということである。このため、プラットフォーマーは事業の初期フェーズにおいては収益度外視でユーザーを獲得し、価値提供を続ける必要があります。このような扱いを受けるべきユーザーのことを「優遇ユーザーグループ」と呼び、反対側の収益源となるユーザーを「課金ユーザーグループ」と呼ぶ。
プラットフォーム型ビジネスは、初期のユーザー獲得フェーズでは収益が上がらないままで多額の支出が続くが、優遇ユーザーグループにおいて過半のシェアを獲得してからは新規顧客の獲得にほとんどコストがかからなくなるため、高い収益性を期待できることが多い。巷に言う「GAFA」などのネット企業は、いずれもこうした特徴を備えており、これらの企業がパイプライン型ビジネスと比較して成長性や収益性で極端に高い理由である。
- プラットフォーム型ビジネスの構築プロセスとその難所
新興・中小の企業がプラットフォーム型ビジネスを実際に構築し、成長させていくための4段階のプロセスと、それぞれのプロセスで企業が直面しがちな課題とその解決方法について、日本国内の具体的な企業の事例を挙げつつ解説する。
1.顧客にとっての大きな「欠損」を発見する
2.欠損を解消する新たな体験を創造し、その価値を極大化する
3.体験価値を高める協働パートナー(異なるユーザーグループ)を巻き込み、相互ネットワーク効果を生じさせる
4.顧客の体験において隣接する領域に価値提供を拡張し、より多くの顧客とデータを集め続ける
従来、このプラットフォーム型ビジネスモデルは、インターネットのビジネスと親和性が高いとされ、事例として取り上げられるのもGAFAに代表されるネット企業が多かった。本講義でも、日本国内でプラットフォーム型ビジネスを構築し大成功を収めたネット企業の事例として、料理レシピを共有するウェブサイトを運営するクックパッド(1997年創業、2009年東証マザーズ上場)を取り上げ、その成長プロセスにおける1~4の具体的な取り組みを紹介。
また、純粋な新規事業ではなく、既にあったパイプライン型のリアルビジネスを途中からプラットフォーム型ビジネスに転換させることができるかどうかは、多くの企業経営者にとって関心の高い論点であるが、これまで日本に限らず世界的に見ても転換に成功した事例がほとんどなく、その取り組み方についてもノウハウが紹介されてこなかった。
リアルビジネスをプラットフォーマーに転換させた希少な成功例として機械式駐車場(コインパーキング)運営のパーク24(1971年創業、1997年ジャスダック上場、2000年代前半にビジネスモデルの転換に成功)を取り上げる。リアルビジネスからの転換の手法やその成功のポイントについて解説。
- 30分 - 質疑応答、まとめ